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裏猫道

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そこに棲まう齢千年のお狐様は、由緒正しき神様であり、金髪碧眼の可愛いお子様でした。

はたけカカシの朝は優雅な朝餉から始まる。稲荷神社の神主の座にまんまと納まってからというもの、彼の一日は非常に有意義なものへと変化した。
まず第一に、彼の食事は、彼の可愛い神様によってきちんと三度運ばれてくるのである。それは、例え彼が日がな一日中読書に耽っていたとしても、寝転がって惰眠を貪っていたとしても、変わらない習慣であった。
「カカシせんせぇ、カカシせんせぇ、起きてってば?」
パタパタ、と可愛らしい足音が聞こえてくる。なんと、耳に心地よい音色だろうか。漆塗りのお膳を両手に持ち、弾むように廊下を駆けて来るのは、三角耳とふさふさの尻尾を持つ金髪碧眼の愛らしい彼の神様だった。
働き者の神様は、朝の日課である社と境内の掃除を終えて来たばかりらしく、可愛らしく息を切らして、主人の元へと駆け寄って来た。
「せんせぇ…?」
舌っ足らずな声が、カカシの耳の鼓膜を震わせた。もみじの形をした手の平が、怠惰な犬よろしく縁側に寝転がっているカカシの身体をゆさゆさと揺する。
「カカシせんせぇ…?」
「おはよう、ナルト。おまえ、朝から元気だねぇ」
カカシはごろんと身体を反転させると、お狐様の小さな身体を持ち上げた。カカシから言わせれば、この神様は真綿のように軽い。ちょこんと、お狐様を自分の腹の上に載せると、着物からはみ出した二本足が頼り無げにカカシの胴へと絡まる。
「おはようってば、カカシせんせぇ」
左目に垂れた銀糸の前髪に指を絡め、髪を掻き上げれば、お狐様はうっとりとした表情でカカシの顔に見惚れていた。
神様は無知故に己の感情を隠すという事を知らない。普通の者ならば、自分の気持ちを悟られまいと駆け引きや、小細工をしそうなものだが、ナルトは自分の感情を剥き出しのまま真っ直ぐ熱い視線をカカシに注ぐのだ。
――そんなにオレの事が好きなの?
奢りだと言われようと、訊ねてみたくなる。もっとも、カカシが艶を含んだ言い方でそのように問えば、恥ずかしがり屋の神様は爪先に視線を落として、真っ赤になってしまうであろうが。
自分の顔が、一般の農村民よりも造作が整っている事を、カカシは重々承知していた。都人特有の線の細い輪郭と、上流社会で身に付けた優美な所作は、流れ人として野で暮らそうと、失われるものではない。本質的な育ちの良さというものは、滲み出るものである。例え、手掴みで握り飯を食べたとしても、カカシとそこらの農民とでは品格に格差が生じるであろう。カカシはそうした自分の崩された野卑な部分が、周囲から至極魅力的に映る事を招致していたので、都での生活においても、部落の間を方々へと回った放浪生活の間も夜伽の相手に事欠く事はなかった。
そして今。その他のどうでもいい大衆や、異性の視線よりも、カカシにとって意味ある一人の視線を射とめられたという事実は、カカシを格別甘美な気持ちにしてくれる。
「カカシ先生、今日の朝ご飯だってば。白米と、小松菜の胡麻和え、茄子の酢漬けだってば?」
ナルトが尻尾をパタパタさせながら、お椀を持ち上げる。賽銭が少なく貧乏ながらも、小さな神社のお狐様は健気で前向きだった。神主であるカカシが何不自由ない生活を送れるように、様々な心配りをし、毎朝、彼の食事を調達・調理していた。
「ん。食べさせて?」
ちなみに、はたけカカシは当たり前の如くこの小さな神様の奉仕を甘受していた。そんなうつけものの男に神様は、
「はい、あーんだってば?」
熟れた水蜜のような頬を真っ赤に染めて、菜箸を器用に動かした。カカシが咀嚼すると、青い瞳を潤ませて、ちんまりとした米の塊を口元まで運ぶ。
もちろん、これらの事柄を全て取り決めたのは神主であるカカシだった。カカシが出す条件をお狐様は全て呑んでいた。〝オレ(神主)との絆を深めるには大事なコトなんだよ?〟とカカシがお狐様の稲穂色の三角耳に吹き込めば、純粋な神様は若い人間の男の言う事を信じきった。
もっとも千年間、社の中に閉じ籠っていたお狐様にとって、百年足らずで生を終える人間の要求など可愛らしいものなのかもしれない。お狐様には、カカシのこうした人間の欲染みた行為を、素直に受け入れる節があった。どんな我儘を強いられようと、満更でもなさそうな顔をして、耳をパタパタさせるのだ。なんと、愛らしい神様なのだろう。
「ナルト。ん、今日も可愛い」
ナルトの手ずから食事を食べていたカカシは、膳を半分程平らげた所で小さな唇に顔を寄せた。
「あ。だめだってば…」
「えー?」
「だって、お掃除しなきゃ…」
神主の男の不穏な空気を感じ取ったお狐様は、両手をつっかえ棒のようにした。そして、ナルトがカカシの腕の中から立ち上がろうとしたので、はたけカカシはそれは見事な三白眼になった。神様のくせにお狐様は勤労意識が高くいつだって大忙しなのだ。
「ねぇ、ナルト。お掃除もいいけど、オレに構ってよ~?」
「で、でも。まだ、手水舎の掃除が残って…っ。それにお地蔵様の所にも行かないと…」
「そんなの後でいいでしょー?」
腰に回された長い腕に、ナルトは慌てた。どうして、ナルトが忙しなく仕事をしようとするとカカシは怒るのだろう。お狐様はカカシも稲荷神社の復興を願っているのだと信じて疑ってもいなかったので、いつも困惑してしまう。
「千年間も続けて来た日課だってば。そういうわけにはいかねぇってばよ」
「そもそもそれってあのイルカとかいう男がお参りに来る地蔵でしょ?」
言い含んだ言い方をするカカシにお狐様はきょとんとした。
「お、おう。イルカ先生ってば毎週来てくれっからさ、お地蔵様を綺麗にしないと…」
「そう」
次の瞬間、ナルトの視界が反転した。天井と一緒に見えたのは神主となった人間の男だった。
「やーだね。他の男の所にいかせなーい」
「男っ?」
カカシの言葉に狐の神様は目を白黒させた。着物の裾を捲り上げられた事にも驚いてしまう。
「ナールト。オレより、そいつの方が良いの…?」
しゅるしゅると、ナルトの着物の赤い帯が床板に解き捨てられた。本能的にナルトが、身を竦ませる。
「ねえ。神様、オレの上に乗って動いて?」
「そ、そんなっ」
羞恥にナルトの頬が真っ赤になった時だった、ガランガランと鈴の音がなった。「今年こそ、良い嫁さんが見つかりますように…、お狐様どうか…」
間が悪い事に、参拝者は寺子屋の教師、海野イルカであった。どうやらイルカは今日に限って地蔵てはなく、神社の方まで赴いてくれたらしい。
「あっ、イルカ先生!」
ナルトはいつも参拝客の願い事を天井裏からこっそりと聞くのを楽しみにしていた。山奥の神様にとって、唯一の村人たちとの接点なのだ。だけど、今はカカシの腕がそれを阻む。
「イルカ先――…」
「だーめ」
「カカシ先生っ。オレってば、行かなきゃっ」
きゃむっという悲鳴が、神様の住まう神社から聞こえた。
「――ん?」
手を合わせイルカが、稚児の甲高い悲鳴を聞き付けて首を捻った。社の中ではお狐様が、カカシの手によって口を手で塞がれて、足をパタパタとさせていた。
もう少し、イルカが身体を傾けて、――もし彼に霊感なぞがあったのなら、お狐様の白い足が本殿へと引き摺り込まれて行った残像だけを見る事が出来たに違いない。



 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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