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裏猫道

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例えば、忍として自分よりも大切なものを作らないのは当たり前のことだ。言ってみれば使い捨ての道具なのだから、そこに余分な意思などがあってはいけない。時代錯誤な考えではあるが、大名の間では今でも当たり前のように忍を消耗品と考えている連中がいるので、あながち自虐的ですらない価値観だろう(と、オレは思っている)。
オレは彼等が己に付ける値札には興味がないが、寡黙に任務に徹するのが忍だと思うし、父のことがあってから忍としての人生を生きる上でどこか周囲に対して冷めた感情を持っていた。それほど、父が忍を引退した後の周囲の冷たさは、類を見ないほど酷いものだったのだ。
だから、誰にも期待しない。誰も己の腕の届く場所には置かない。オレが忍である限り、多くは望まない。一度、どん底の冷たさを経験したオレにとっては、例え温かな火がそこにあっても近寄ることが躊躇われた。
その温かさは、まやかしなのではないだろうか、と疑ってしまうからだ。だから、正直、ナルトのような人間は苦手だった。無邪気で人懐っこい。プラスかマイナスかで言われれば、〝陽〟の部分に属する少年を見ているだけで、己の中の矮小で汚い部分が露わにされたようで、酷く惨めだった。
きっと彼の周囲に自分のような歪で曲がった存在はいらないに違いない。余分なものなのだと、わりと早い段階で結論が出ていた。
それに比べ、黒髪の少年には親しみを覚えた。言って見れば、タイプが似ていたのだろう。マイナスとマイナス同士。家族を失った少年は影を暗い背負っていた。過去の己を見ているように、彼の行動がわかるので、人生の先達者として、アドバイスや助言を言ってやりやすかったのも確かだ。それに加え、彼はオレの人生に大きな影響を与えたと言って良い友人の血族の末裔であった。そうした縁もあって、何かと面倒を見てやろうと思うことが多かった。
嫌がる黒猫を家に上げて懐かせるが如く、オレはサスケを構った。同じ孤独を抱えるのであれば、わかり合えると単純に思ったのだ。傷の舐め合いのようね、と黒髪の同僚くの一に言われたが、オレはそれが皮肉だとは理解できなかった。
同じ〝孤独〟であるならば、ナルトの置かれた境遇は想像を絶するものではなかったのだろうかという悲劇的な事実を、オレは配慮することができなかった。
サスケのように、在ったものが奪われ壊れたのではなく、与えられすらもしなかった、というあの子の孤独は、一般人の想像の枠を軽く超えるというのに。
不幸を天秤に掛けて重さを量るなんてことは酷く下卑た行為ではあるが、ナルトの境遇は黒鳥頭の少年より遥かに不幸だった。そして、ナルトは自分が孤独な境遇であるということすらわからなかったに違いない。
何が哀しいことなのか、不幸なことなのか、涙を流すべき事柄なのか、それを判断する基準というのは、比べるものがあって初めて成立するのわけであって、言って見れば不幸であると思えることは、持っている者たちだけが得られる自虐的な嗜好品なのだ。
ナルトは腹の中には九尾という災厄が入れられ、周囲からの救済の手は何一つ与えられなかった。家族という温もりに触れることもなく、普通の子供がごく当たり前に経験することですら、ナルトの周囲から円を描いて避けて行った。
だから、ナルトは〝父親〟や〝母親〟、〝兄弟〟つまりは家族というものを、こうしたものなのだろうかと想像し、代理で補うことで幸福を得るという行為に、幸せを見い出していたのだ。なんという苦肉の策だろう。
一方サスケは、エリート一族の生き残り故に里の上層部からも周囲からも持て囃され育った。本人がそれを受け入れないにしろ、拒絶するにしろ、援助の手は常にあったはずなのだ。
それを全て突っぱねて本人が〝孤独〟だというなら、甘えであったかもしれないし、世間知らずな坊ちゃんの戯言であったかもしれない。
ナルトは火影の庇護があったにしろ、基本的に孤独で、両者を大地で表すなら、サスケは焼け野原、ナルトは種を撒くことすらされなかった荒れ地だ。―――だから、比べるものを持たない、持たざる子供は悲劇としか云い様がないのだ。
言って見れば、もっとも救済の手を受けるべき少年をこの里は放り出した。様々な救難物資は、九尾の器であるあの子が悲鳴も上げずに我慢しているというだけで〝問題無し〟〝大丈夫だ〟と素通りした。
そう、オレはあの子が愛情に、飢えて、飢えて、不幸な子供であることを知っていたはずなのに、ナルトのマイナスの部分を見ようともしなかった。
それどころか、明るい笑顔で笑う少年を見て、忌避の感情すら抱いていたというのだからお笑い草だ。
何も与えられなかったから、失う悲しみがなく、平気だったなどと言うことがあるはずがないのに、あの子が笑顔であった、ただそれだけで罪がなかったような気分になっていたんだ。
手を伸ばし、幸福であった記憶の、その感触を知ることもない。言って見れば、愛情の形の手本すら、少年には与えられなかった。それでも明るいあの子の存在がどれほど、奇跡であったかなんて、不思議なことに一度も思わなかった。
「どうして、あの依頼人はナルトにだけ、泥水をかけたんだ」
「………」
「ドベの奴、泥だらけのくせに、笑って、馬鹿みたいだと思わないか?」
それは夏の暑い時期に、黒髪の少年にスライスしたトマトを硝子の皿に載せてテーブルに運んでやっていた時だと思う。好物であるはずのトマトを見て、少年は眉間に皺を寄せた。自分の口に入る食物がオレの指に触れたというだけで気に食わなかったのかもしれない。
「サスケは最近、ナルトの話ばかりだね」
「別に、ただ気になったからだ。それに、アンタも、ナルトのことを気にしているように見えたからだ」
「オレがナルトを…?」
「いつもアイツのことを見てるだろうが。気持ちわりい。変態上忍が」
「は?」
「気付いていないならいいんだよ。ウスラトンカチ」
オレはサスケの言葉に訳が分からず首を捻り、「教師に対して暴言を吐くとはいい度胸だねぇ」と、椅子に座って二本足を投げ出しているサスケを小突いた。
「あいつは、ドベだが、オレは嫌いじゃねえ」
耳朶を赤く染めた黒髪の少年は、無意識に金色の少年に惹かれているらしい。小さな恋が他愛無いと思った。加えて、九尾の子供を好く彼は、九尾を使役すると言われた一族の末裔だ。これはなんと数奇な運命か。
ほら、まるで一対の美しい物語のようではないだろうか。惹かれ合い、共鳴し合い、反発し合う、全ての運命が彼等に集約しているようですらある。
では、余分なモノはオレであるというのか。左目をオビトから受けたものの、オレはうちはの一族ではない。言わば、オレはうちは一族の能力は受け継ぐ者のそうではない異物である。
そこでオレの立っていた地面が不安定になった。
過分であったのはオレ?
オレさえいなければ、たとえばこの少年をここに留めていなければ、…どうなったのだろう。
その時、ピンポーンと暢気で無遠慮なチャイムの音が鳴った。リビングにサスケを残して、玄関の扉を開けると、ひよこ頭の子供がモジモジと立っていた。
「ナルト。どうしたの?」
「あのさー、あのさー、ここってカカシ先生の家だろー?」
「そりゃ、オレが出迎えたからそうだろうね」
「ん…」
「どうしたの、おまえ」
「実はさ、オレってばカカシ先生に渡したいものあってさ」
「何…?」
「んとさー」を百回くらい繰り返しそうだった子供に焦れて先を促してやれば、
「はい、これってばお花!」
「……?」
小さな手から白く小さな花が勢いよく差し出された。
「なにこれ」
「え、お花だってば。オレが花畑で摘んで来たってば」
「はぁ。そういうことじゃなくてなぁ」
オレが呆れてため息を吐くと、ピンク色の頬をしたナルトがぱちくりと瞳を瞬かせていた。
「おまえね。男が男が花に送るって趣味が悪いにも程があるぞ」
「え」
「どういうつもりなの?」
「気持ち悪いことなんだってば…?」
「そりゃ、おまえがサクラならわかるけどねぇ…」
「――え、わ、その、ごめんってばよ…っ、カカシ先生。オレってば、こういうのよくわかんなくてさ」
こんな時のおまえは、また持たざる者の哀しさがちらほらと見える。慌てて誤魔化して、明るく笑って、本当におまえってそういうの得意だよね。
「先生、別にいらないって言ってないぞ~」
「無理しなくっていいってばよ…っ」
「オレが今まで嘘吐いたことあったか~?」
「いっぱいあるってば」と断言しかねない表情でオレを見上げていたナルトは、ふとオレの足元に視線を這わせると、軽く碧い瞳を見開いた。
「サスケ…、いるの?」
「ああ、いるよ。――入る?」
静かに、ナルトが息を呑んだのを感じだ。明らかにオレがプライベートである、という雰囲気を出したからだ。普段はあれほど鈍そうなくせに、こうした場面でだけ何故かナルトは人の感情の機微に聡い子だった。
「……い、いいっ。オレってばこれから修行だし!」
「そ?」
「そう!」
帰って欲しいな、という雰囲気が露骨に出ていたのを察してくれたらしい。逃げるように、去って行く背中にオレはなんとなく声をかけた。
どうしてか、胸がつきりと痛んだからだ。オレの言動一つ一つに杞憂するナルトの姿が愛らしかったせいもあるかもしれない。
「気を付けて帰りなさいよ」
途端に、泣きそうなくしゃっとした笑顔が返ってきた。また、心臓が凝縮するような感覚に囚われ、他愛なく、可愛い子供だと思った。しかし、ただそれだけだったはずだ。
「ナルトが来ていたのか」
ふと気付けば、後ろにサスケが立っていた。サスケは、去って行った金児の後を追いかけたいような素振りを見せていたが、オレはすかさず扉を閉めてそれを制した。
その後、サスケは里を抜けた。ナルトはそれこそボロボロになってサスケを追いかけ、それでも失った。雨の降る谷で、ナルトを抱き起こした時、その身体の軽さに驚いた。
元気の塊だと思っていた子供は、酷く軽かった。
そのギャップがきっかけで興味が沸いたのかもしれない。二年半におよぶ修行の旅に出て帰って来たナルトをオレはよく目で追い掛けるようになった。
綺麗になったな、と思った。鼻に付くような騒がしさは、成長と共に多少なりを顰めたらしく、落ち付いたような印象を持った。そのうえ、何か思い悩み考え事する時の仕草が柄も知れぬほど色っぽくて情欲を煽られた。
声を掛けたのは、気まぐれだった。どんな抱き心地なのだろうと、興味本位で誘った。てっきり嫌悪を示すかと思った少年は、オレの簡単な誘いに呆気なく応じた。驚きだった。それどころか、要求すればどんな淫らな行為にも応じて、娼婦さながらにオレの下で喘いだ。それほどの好意を、少年から寄せられていたことに驚きを禁じ得ない。
ナルトの薄い背中が撓るのを見て、オレ以外の男の前でもこんなふうに喘ぐのだろうかとつまらない想像をした。バックから犯している時に「サスケだったら…」と呟いた瞬間、組み敷いていた少年がビクリと震えた。
ナルトが、何か勘違いをしているとわかったが、その間違いをオレは正そうとはしなかった。
その夜から、ナルトは苦痛に顔を歪めながらオレに抱かれた。どうしてか、傷つくナルトの顔を見て、壮絶な快感が襲った。
涙に濡れた瞳にキスをしてやれば、その瞬間だけ嬉しそうに哀しそうに笑い、思い出話をするように、サスケの話をすれば、また傷ついた顔になった。
その様が、壮絶に愛らしかった。


だから今――、
他の里の男共に、ナルトはどう映るのだろう。
サクラならまだいい。不思議なことにそう思えた。
異性とナルトの行為がオレにはどうも思い浮かび難い。
それどころか、ナルトの色香は、同性に対して壮絶に発揮されるのではないかとすらとも思った。笑えることだ。きっと自分がナルトを組み敷いていたからだろう。しかし、それでなくとも、オレと別れたことで不穏な噂を幾つか覚え聞く。
曰く、九尾の味はどのようなものかと。
手折った花は可憐で、オレの知らない場所で淫らに咲いていたとしたら、それは少しだけ悔しいことではないだろうか。






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