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裏猫道

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「ナールト」
金髪の背中に向かって甘い声を出して呼んでやれば、怪訝そうな表情が返って来る。そこは、あまり性質のヨロシクない飲み屋が並ぶ通りで、通行人の視線は時折金糸の少年へと絡められるように纏わり付いていたというのに。ああ、なんて無防備。
「最近、随分サクラと仲が良いんだね…?」
ナルトが、サクラの自宅へ行った帰り道だということはわかっていた。実家暮らしのサクラの家にナルトが上がり込むことなど、今までほとんどなかっただろうに、珍しいことだ。ナルトは一般人である彼女の両親に遠慮して、チームメイトの家に行くことはほとんどなかったはずだ。
どうやら、サクラの両親はナルトのことを過去のことを忘れ気に入ってるらしい。いつかヤマトから教えてもらったことを思い出す。
「カカシ先生には関係ないだろ」
「冷たいなぁ。部下のこと、気にしちゃいけないわけ?」
傷付いた、ナルトの表情にゾクリと這い上がるものを感じる。本当に、この子は人の嗜虐心を煽る。
「サクラとセックスしてるの?」
「サクラちゃんとは、そんな関係じゃないっ。サクラちゃんに対してそんなふうに言うなんて先生でも許さねえっ」
「ふーん、抱けないんだ。そうだよね、ナルトは抱かれるほうが好みだもんね?」
「――――なっ」
カッと頬を朱に染めた少年が、突っかかって来る。カカシはそれを片手で簡単にかわして、その体を抱き止めた。
「あっ。やだぁ」ナルトの悲鳴と共に、ぼふん、と煙が上がって、二人の体が煙に包まれたのは、その一瞬後。





「おまえ、ここが感じやすいよね。自分じゃ知らないでしょ?」、
「く、やぁっ」
「こんなにいやらしい体じゃ、もう女の子のこと抱いても満足できないんじゃない?」
「そんなことは」と涙目で訴えようとしたナルトの身の内を、カカシのペニスが深く抉る。そのまま四つん這いの体勢で激しく突かれ、白濁とした液体が、ごぷりと音を立てて臀部を伝った。
噛みつくようなキスと共に、カカシとナルトは床に転がった。着ていた衣服は全て脱ぎ、生まれたままの姿で交わる。上になって、下になって、お互いの体液がどちらのモノかわからなくなるまでセックスして、結局残った物は、排水溝に流される精液だけ。何も産まないセックスのあと、ナルトはぐったりとシーツに沈んでいた。太股に伝った白い液体。
「んで、こんなことすんだよ。先生のやったことは強姦だ…」
「あやまらないよ」
「んな…っ」
キスマークだらけの胸部を晒したまま、ナルトはごろんとシーツの上で仰向けになると、カカシはベッドサイドに腰掛けて、何事か考えているような様子だった。
「オレ、もう帰るからな。明日、オレのこと、こういうふうなことに使うの、これっきりにしてくれってばよ。カカシ先生」
ナルトがふらつきながらも、ベッドから起き上がった。その腕をカカシは引っ張った。
「好きだ」
「は……?」
「性欲処理じゃない。そんなつもりで、抱いていたつもりはなかった」
窓の外を見れば、すでに空が白み始めた頃で、夜明けは近かった。
「オレは、おまえのことを、愛し始めていたよ」
「嘘だ」
「確かにオレは、おまえのこの少年らしい身体を愛したよ。しなやかな手足、細い骨格、喉、そうだね、サスケを思い出すこともあったかもしれない」
「―――っ!」
「例えば、アイツの背はおまえよりも高いかな、とか。アイツの声はおまえより低いかなとか。どれくらい強くなっただろう。おまえを、ナルトを組み敷けるほどの、力を手に入れてしまっただろうか、とか」
「へ?」
「少しだけ高い背でおまえを見下ろすのかな、とか。アイツの低い声は、おまえにどう響くだろうかとか。強くなったアイツをみて、おまえはどう思うかなとか」
「カカシ先生、何を言ってるんだってばよ…?」
「おまえはオレとサスケが特別な関係だと誤解しているようだけど」
「……っ」
「あの子とは、オジと甥っ子のようなモンなんだよ。おまえは、身内に肉欲が抱けるか?」
「そ、それは……」
そこでナルトは酷く頼り無げに、視線を彷徨わせた。ああ、とその時カカシはナルトを取り巻く環境を思い出した。
「わからない…。オレには、〝身内〟っていう感覚が、よくわからないんだってば…」
「ナルト…」
「どこからが外の人だってば。人との距離を、境界線を引くことができない。オレは、みんな大事だ…みんな大好きだ…」
次に、ナルトがいたのはカカシの腕の中だ。なんて愛おしい、と呟かれ、驚いたように少年は頭上の大人を見上げる。
「オレはおまえを愛し始めてた。だから、おまえにサスケの話を出された時、ショックだった。どうして、おまえの口からサスケのことが出て来るんだろうって」
「………―――」
「確かに、オレは、片時もサスケのことを忘れることができなかったよ。それと言うのも、いつかオレの代わりにアイツがおまえを取って行くんじゃないかと、密かに怯えていたからだ。余分なものは、オレだとオレが誰よりも一番知っていたから」
「なんで、カカシ先生が余分なもんなんだよ」
「だって、そうじゃないか。おまえとサスケを見ていたら、惹き合い寄り添うのが必然のように思える。そこに、オレの割り込む位置があるか?だから、おまえたちの仲を邪魔して、わざと拗らせたのはオレかもしれない。オレを憎んでもいいんだ。サスケが、里抜けした一因はオレにもある。オレは、アイツが里抜けをするとわかっていながら、わざとそれを止めなかった。どうしてか、今やっとわかった。自分でも己の姑息さにびっくりだよ」
そこで、カカシは目の前のナルトを真っ直ぐ見つめた。
「オレは、おまえのことが欲しかったんだ」
「………っ?」
「臆病な大人で、ごめんね。告白が遅れて、ごめん」
日に焼けていない大人の手が伸びて来た。
「オレの恋人になって、ナルト。おまえをオレの大切な人にさせて」
「………っ!」
「いやだって言っても、もう離してなんてやれないけどね?」
「カカシ先、生…」
あ、あれ。涙腺がおかしいってばよ。
「ナルト。大好きだよ…」
鼓膜もおかしいみたいだ…。














だけど、オレのこの頬を包むカカシ先生の体温は本物だった。 
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