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裏猫道

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R18
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2年半ぶりに里に帰って来たあの子は驚くほど綺麗に成長していた。太陽の光を受け曲がる事を知らないかのように伸びた身長。少し低くなったが、そのぶん落ち着いてよく透る明るい声。堂々とした態度。きめ細かい肌に、触れればさらさらと流れる金色の髪の毛。
その上、意志の強い真っ直ぐな瞳は相変わらずと来たものだ。これで人目を引かないはずがない。
カカシは焦っていた。増え続ける恋敵の多さに。
いったい誰が想像した?あの騒がしいばかりだったあの子がたった2年半の歳月で殻を破るように綺麗に成長した。
疎んじた目でナルトを見ていた奴等の目の色が変わった。いや、中忍試験の頃からその片鱗は見えていたかもしれない。あの子と直接対面した試験管を初め、試験会場に来ていた一般人、中忍、上忍、誰もがナルトに魅了された。
カカシは、ナルトの担当上忍として、同僚たちから何度もナルトのことを尋ねられた。そうして、笑みを作ったまま同僚等の質問に答えながらも内心は焦げ付くような焦燥に駆られた。ある意味、あの試験以来、注目を集めたのはサスケよりもナルトだったのだ。あの子の忍としてのスキル資質を問う質問以上に寄せられた「うずまきナルト」自身に対する関心が、何よりカカシを焦らせた。
それでもまだ12歳の頃は良かった。可愛いだの、微笑ましいだのと、愛玩動物のようにちやほやされているうちは。だが、15歳になって、あの子を追いかける視線に劣情が入り混じるようになった。
あの子は人からの好意を素直に受け取る。笑って話しかけられれば、戸惑いながらもはにかんだように笑った。
ナルトが、無防備な笑顔を見せるたびに、やめろ、そんな顔で笑うな、と飛び出して行きたくなる自分を堪える事が出来ない。誰にも見せたくない。隠してしまいたくなる。ごく僅かな者しか知らなかったナルトの魅力が、公の元に晒されようとしていた。
今頃気が付いたくせに、あとからあとから惹き寄せられてくる奴等が、まるで蛍光灯に集る羽虫のように思え、今や「優しくしてくれる大人」というだけで、ナルトの特別な位置にいたカカシの立場はなんら珍しいものではなくなってしまった。
カカシは、ずっとナルトのことが好きだった。カカシは、わずか12歳の少年に恋心を抱いていたのだ。下忍の頃から思いを寄せていたと言ったらあの子は気持ち悪いと罵るだろうか。
〝カカシ先生、大好き!〟
あの日、橋の上であの子の口から何気なく飛び出した台詞。もう何度、思い出したかわからない。カカシの頭の中で繰り返し再生されるそれ。記憶という名のカセットテープで録音されたその音声はもうすっかり擦り切れてノイズが走ってしまっている。
首元に犬っころのように抱き付かれた時、口では寄せだのやめろだのと言っていたカカシが、内心どんなに歓喜していたか、ナルトは知らないだろう。
ナルト。オレがおまえに優しかったのは、おまえに良からぬ感情を持っていたからなんだ。ズルい、汚い大人なんだよオレは。
カカシは、担当上忍としての立場を保ちながらも、教え子であるはずの子供に欲情していた。そんなカカシが、12歳のナルトに手を出さなかったのは、夢や目的に向かって一直線に突き進む子供を、自分の汚い欲望で穢してしまうことを恐れたからだ。
あの子はオレなんかが手を伸ばして良い存在ではない。だから、カカシは元気よく飛び跳ねるナルトの背中に恋焦がれながらもそれをただ追い掛けているだけだった。
そしてカカシは、教師という立場上、同じ立ち位置に立ってやることが出来なかったが、近過ぎず、かといって遠過ぎない距離でナルトを見守っていた。
そうやって、ずっと子供が少年、大人へと成長する過程を待っていたのに、欲に塗れた感情を抱いていたのが自分だけではないことを知った時、カカシはナルトを自分のものにしてしまおうと決心した。
見守っていたいと思っていた。大切にしたいと。
――だけど、それももうおしまい。
ねえ、ナルト。おまえはいつか誰かに言ってたよね、聞いちゃったんだよねオレ。
「カカシ先生は優しくて良い先生だってば」って。
その優しいカカシ先生がどんなにおまえを欲しがっていたかわかる?
欲しくて、欲しくて堪らなくて、だからね。
もう二度と同じ関係に戻れなくてもいい。これが、はたけカカシが辿り着いた結論。
自分の手に入らないなら壊してもいいから手に入れる。掴んでけして離さない。




疲弊した身体を無理矢理叱咤して、ナルトは演習場へと向かっていた。太陽の光が燦々と照る昼間の木の葉、陽気な天気が一層ナルトを打ちのめした。
身体中に散々付けられたキスマークや生々しい情交の痕はシャワーを浴びて服を着替える頃には消えていた。この時ばかりは九尾の回復力に感謝せねばなるまい。
だが、まだ足や股関節の辺りが引き攣ったように痛い。普段使わない筋肉を酷使されたせいであろう。
ナルトは自分に覆い被さって来た大人の身体を思い出して首を振る。忘れろ、忘れるんだってば。あれは悪い夢。
カカシの裏切りはナルトの心に深刻なダメージを負わせた。ナルトにとってカカシはイルカの次に自分を認めてくれた大切な大人で、信頼していた大人に性的な行為を強要された事実は、なんとも思っていない相手から受ける謂れのない暴力以上に酷い仕打ちだった。
だからつい先程、任務の召集が掛かった時、沈鬱な気持ちになった。召集場所にはあの大人がいる、と確信したからだ。カカシと一緒の任務に当たると飛び跳ねて喜んでいたついこの間までの自分が嘘みたいだ。
もう元の関係には戻れない。下半身にまだ僅かに残る鈍痛が、決心させた。図らずも、カカシと同じ結論にナルトは行き着く。
無理矢理、開かされた肉体。下忍の頃から憧れていた、逞しい大人の身体。抵抗する自分を簡単に押さえ込んでしまった長い腕や、細身だが鍛え抜かれ引き締まった筋肉。
下忍の頃はいくら頼んでも見せてくれなかった大人の素顔を見たのは昨晩が始めてだったかもしれない。冷やかな笑みを口の端に浮かべながらも、熱っぽい視線で自分を見下ろした里でも珍しいオッドアイは美しかった。自分を犯している酷い人なのに、見惚れてしまった。
カカシの肉棒を挿入された時の感触を思い出して、ナルトはぎゅっと拳を握った。初めて見たカカシの性器は、自分のものとは比べものにならないほど大きく、中を掻き混ぜられれば、喉から嬌声が飛び出した。
同性から見てもカカシは綺麗な男だったが、最早カカシを形成する肉体器官全てがナルトにとっては、畏怖の対象でしかない。
射精をされた時のあの恐怖。いやだ、やめてくれと懇願しても、カカシは全てを注ぎ込むまで止めてはくれなかった。
「ナルト、おっそーい。なにしてるのよー!」
演習場に到着するとサクラの姿があった。今日はやけに彼女の潔白さが眩しかった。
「サクラちゃん、ごめんってばよ」
ニシシと笑ってナルトは明るい笑みを造る。きちんと笑えている自分の現金さに少しだけ驚いて…安心した。
「もう。みんな集まってるわよ」
サクラの背後には木の幹に背を預けたヤマトと岩に坐っているカカシがいた。ナルトの心臓が一つ跳ねる。しかしカカシはナルトを一瞥しただけで昨晩のことなど何も覚えていないかのような普段通りの態度で任務の説明へと移った。
「――以上、今日のところは解散。明日からオレが部隊長でフォーマンセルで行動、任務を行うぞ」
「はぁ~、長い任務になりそうね」
最低でも1週間は掛かる里外任務だということが伝えられて、30分ほどのミーティングの後にカカシから終了の合図が告げられる。
「サイが別任務についてるのが残念ね。あんたたち、最近凄く気が合ってたじゃない?」
「げぇっ、サクラちゃんってばどこ見ていってるんだってば。オレってばあんな空気読めない奴より、断然サクラちゃんがいいってばよぉ!」
「却下」
「サクラちゃん冷たいっ!」
ナルトはサクラと軽口を叩き合う。ナルトはそのままカカシと視線を合わせないようにして、サクラと商店街の方へと向かおうとした。
「ナルトだけ残ってくれる?」
そんなナルトの行動も虚しく、背後からカカシの声が掛かった。ヤマトはすでにいない。あとに残っているのは銀髪の上忍だけだ。「あんた、またなんかやったの?」ナルトは首を傾げたサクラにへへへと手を振ると、なるべくいつもどおりの仕草で大人に駆け寄り、サクラの姿が見えなくなっても、口を開かなかった。
重たい静寂が辺りに落ちる。先に沈黙を破ったのはカカシだった。カカシは口元に笑みすら浮かべていた。
「ナルト、どうしたの。顔色が悪いよ……?」
カカシが、労わるようにナルトの頬の痣を撫でる。
「さっきまであんなに元気そうだったじゃない?」
温度のないカカシの声に、ビクンとナルトの身体が強張る。「貧血…?あれでも昨日は血が出ないように気をつけたけどな」
薄くスライスした三日月みたいにカカシが笑った。
「昨日は無理させちゃってごめんね?おまえのこと犯しちゃったでしょ?火影様に呼ばれちゃって朝までいてやれなかったから心配だったんだよ、おまえが泣いていやしないかってね」
カタカタとナルトの身体が小刻みに震え始める。
「可愛い…オレが怖いの、ナルト?」
「………っ誰が!!」
強気な言葉とは裏腹にカカシから逃れようとするナルトの腕を、カカシが絡め取る。
潤んだ瞳に、震える唇。怯えてることを一生懸命隠している仕草が相手の嗜虐心を煽る事をこの少年は知らないのだろうか。
「これからオレがじっくり色んなことを仕込んであげる。オレ好みになるようにね?」
「―――なっ!?」
「任務中が楽しみだよ、ナルト」
本当に堪らないよ。何にも屈しないその瞳はいつまで続くのかな?
悪しき呪文のように、カカシがナルトの鼓膜に囁いた。
「たっぷりオレの相手をしてね…?」
カカシは、細い腕を引っ張り腕の中にナルトを抱き込んだ。カカシの懐にすっぽり収まるまだ華奢な身体は、少し力を入れればポキンと折れてしまいそうだ。
ナルトの全身が強張ったのを感じ取ってカカシの背中がゾクリと震えた。生徒である金髪の少年の頭をぽんぽんと叩く教師。カカシの顔には笑みすら浮かんでいて…傍目にはきっと仲の良い師弟の姿に見えるのだろう。












 



 

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