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裏猫道

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「ふふふ、仲が良いですねぇ」
二人の部屋から大浴場へと向かう途中のフロントで、20代前半くらいの若い娘からナルトは声を掛けられた。
一時、きょとんとしてから周囲を見渡し、ついでに横のカカシも見上げる。受付係の女性はそんなナルトの様子をニコニコとした笑顔で見守っている。
「……ええと、オレ?」
「ええ、そうですよ?」
ナルトはかなりビックリして受付係の女性を見つめた。大抵、カカシと歩いていると女性から声を掛けられるのは、カカシだったからだ。
顔の半分以上を隠していても、女の勘とやらでわかるのか、大概の女性はカカシの口布の下のマスクが整っていることに気が付いた。唯一晒されている右目が、切れ長で、時々優しげに細まることも、高ポイントの理由なのかもしれない。
ナルトは、そんなことを思いつつ今までのムカつく場面ベスト10を思い出していた。大概、彼女等にはカカシの傍らにいる小さいナルトは目に映らなかったのだ。それは九尾だからとか、そんな理由もあったかもしれないが、女の人たちにとって手を繋いでいるナルトは眼中にもない存在だった。例え、カカシの優しい視線が、傍らのナルトに堪えず注がれているものだったとしてもだ。
そんなナルトに対してフロントの女性が、愛想良く笑う。
「貴方の金髪ってとても綺麗ね。この辺りではあんまり見掛けない色だわ。それにその碧い瞳。空の色みたいでとっても素敵」
「……え。あ、ありがとってば」
ナルトは、受付係の女性の言葉に目を白黒させて、答える。かろうじて自分の見目が褒められているらしい、ということを理解して、あたふたしながらも受け答えをする。
「とくにこの地方は一年の半分が分厚い雲と雪に覆われているから太陽も碧い空もあんまり見えないの。貴方の持っている色、とても眩しいわ」
「え、えと」
「ふふ、やっぱり反応も可愛いわ」
「???」
「ねえ、ねえ、きみって幾つ?」
「16だってば」
「あら、やっぱり若いわ。ねえ。年上の女ってどう思う?」
「へ?」
ナルトは、巻き貝みたいな髪型を綺麗にまとめた女性をじいっと見つめてから他意はないのだが、
「綺麗なお姉さんは大好きだってばよ?」
とだけ答えた。隣にいるカカシの眉の根が僅かに寄ってるとも知らずに。
「きゃ、本当!?」
手を合わせてはしゃぐ女性に、低気圧が接近している上忍の頭の中。ナルトは人からの好意に素直だ。悪意に敏感なように。好かれるのは悪い気はしないと、人一倍喜ぶ。少年の生い立ちが、そうさせたのをカカシは重々理解しているつもりだが、目の前で無邪気に好意を受け取る様子を見るのは面白くない。非常に、面白くない。
「あ、あのさ。カカシ先生。あの、手…?」
「ほら、温泉に行くよ~」
「ああ……!?」
照れ笑いを浮かべていたナルトの手をカカシは問答無用で引っ張ってフロントから引き離した。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


 



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