大浴場での風呂を堪能して、食事の時間になる。部屋での食事に、料理に舌鼓を打とうとしたまでは良かった。
が、しかし。ナルトは先程からぶすむくれたまま、一点を睨んでいた。ナルトの視線の先にはカカシと仲居の女性の姿。
二十代半ばくらいの彼女は、膳を運ぶ用件が済んだというのに、いつまでも退室しようとしないのである。
「えー…それじゃあ先生と生徒さんなんですか。仲が良さそうに見えたのでてっきりご兄弟かと思いましたわー」
「はぁ、兄弟ですか……」
「それにしても先生思いの良い生徒さんですね。福引で当てた旅行に先生を連れて来てくれるなんて!」
「はは、オレの教育が良くて可愛い生徒なんです」
後れ毛が色っぽい和服美人という奴だ。鈴の転がるような声で先程からカカシに喋りかけている。なんだか、カカシの笑みがデレデレしているように、見えなくもない。
とのような理由で、ナルトの頬は蛙の頬袋のようにぷくんと膨らんでしまっていた。
カカシ先生ってば、オレにはあの受付の女の人に近付くなって言ったくせに、自分は美人な女の人ハベラセて感じが悪いってば!!と、着物の裾から覗く仲居の女性の谷間と自分のつるぺたな胸部を見て、ナルトは爆発した。
「…カシ先生」
カカシが、心の中で仲居の女性に百回ため息を吐いているとも知らずに、ナルトは唇をぎゅっと噛んで隣に座っていたカカシの浴衣の裾を握った。
「ん、どうしたのナルト?」
「…………」
「ナルト……?」
「………オレってばカカシ先生と二人っきりがいい」
「……………」
ナルトは耳まで赤く染め上げて、カカシの浴衣の裾をくいくいと引っ張る。「センセ……だめ?」切なげな声色を落とされて、カカシは箸を取り落とした。
「あら、焼き餅を妬かれてしまったみたいですね、カカシさん」
コロコロと仲居の女性が笑う。
「…………」
「カカシさん……?」
「……ナルト」
「はえ……?」
はらはらとカカシの頬に涙が伝う。
「あ。あの、カカシさん……?」
仲居の女性が頬を引き攣らせて、カカシの様子を伺うが、既に彼女の存在は綺麗さっぱり忘れ去られていた。
「ナルト。もっと先生の傍においで。ああ、オレの可愛いナルト…」
「うげ!」
「こーら、暴れないの。大人しくしてなさい…?」
どこか危ない雰囲気を漂わせるカカシに慌てたのはナルトだ。
「わたくし、これで失礼させてもらいますわ…ほほほ」
「だめだってば、カカシ先生。ストップ、お座り。あ、あの仲居のお姉さんこれはその…ぎゃーーーー!」
ナルトの頬にカカシの口布を付けたままの唇が接合したところで、仲居の女性はたおやかに襖を閉めた。
「わぁっ、だめだってばカカシ先生!んうう……!」
浴衣から肌蹴た足を辿るようにカカシが口付けて行く。浴衣を乱して、カカシの手が這いまわる。そのまま、足を割り開かれあとはご推察の通り。結局、ナルトが食事にありつけたのは膳の料理がすっかり冷めてしまった頃だった。