術師の事を「先生」と呼ぶのだとオレの前の神主様が教えてくれた。だからオレってばカカシ先生の事を〝せんせぇ〟って呼ぶ事にしている。カカシ先生は凄く恰好良くって、オレに優しい。
今日も縁側に座るカカシ先生の髪は銀髪で綺羅綺羅とても綺麗。都育ちだというカカシ先生は、きっと都でも高貴な身分の人だったに違いない。それほどカカシ先生の仕草は一つ一つが優雅で、食事に箸をつける仕草すら思わずほぅっと感嘆のため息が出てしまうほどなのだ。こんな綺麗な人がボロっちぃ神社の神主様をしてくれるなんて、分不相応だってわかってるけど、カカシ先生に微笑まれるだけで、オレってば心の臓が高鳴ってしまう。まだまだ未熟者の神様だけど、オレってばカカシ先生のために一生懸命頑張ろうと思うんだってば。
「ナールト。ちょっとこっちにおいでー」
カカシ先生が神主としてウチの神社に来て、〝契約〟を終えて、何日かした時の事だったと思う。カカシ先生は外に用事があったようで、オレを残して神社から出掛けた。オレってばもしかしたらカカシ先生がこのまま帰って来なかったらどうしようと、実は心配で堪らなかった。カカシ先生のコト、疑っちゃいけないと思っても今までオレに優しくしてくれた人間はみんな〝またね〟と言って二度と帰って来なかったから、不安で仕方ないんだってば。人間の命は儚くて、それ故に美しいけど、異形の者であるオレはいつも取り残される側だから。
ヒトリっていつまで経っても慣れる事がなくって不思議。千年の孤独は、寂しくて苦しくて、オレってばこの神社にひとりぼっちはもう嫌なんだってばよ。
だから、カカシ先生が帰って来てくれた時、嬉しかった。カカシ先生はオレの事、置いて行ったりしないんだ。思わず、「たーだいま」と帰って来たカカシ先生に我慢できなくって抱き付いちゃったってば。カカシ先生はオレがぐすぐす泣いてるって気付くと、オレの頭をいつまでも撫でてくれた。村人に尊敬されるべき神様なのに、泣きべそだなんて恥ずかしいので、これはカカシ先生とオレだけの秘密。
「心配掛けちゃってごめんねぇ。山二つ越えたところで市が開かれてるって噂を聞いたから、ちょっと物資の調達に行って来たわけよ」
縁側に腰掛けたカカシ先生は着崩した着物の襟を開けながら座る。カカシ先生以外の人がやったら絶対だらしのない恰好なのに、カカシ先生だとサマになるのだから不思議。
「そんなの、オ、オレに行ってくれれば良かったのに。カカシ先生、何か欲しいものあったのっ?」
何か足りないものがあったのだろうか。カカシ先生がこんな山奥で不便な生活を強いられていたかと思うと胸が痛んだ。我慢をさせている事に気付けなかっただなんて、自分の鈍感さ加減に嫌になる。哀しみのあまり小刻みな震えが止まらなかった。
「んー。でもナルトの贈り物だから、おまえから貰うってのも恰好がつかないデショ?」
オレ、おまえの情人になりたいわけじゃないし。ちゃんと愛しい子のコト、養ってあげたいデショ?とカカシ先生はえーとなんていうんだっけ、…ああそうだ、艶っぽく笑った。
ジョウニン…?
情人…?
………。
うん、カカシ先生の使う言葉は都言葉が多くてオレには難解な事が多いってば。
「はい。これ」
「え」
そういってカカシ先生が拡げたのは、真っ白な着物だ。オレは思わず目を見開いてしまった。
「これを、オレに…?」
「うん。オレからの贈り物だよ。気に入ってくれると嬉しいんだけど…」
何を隠そうオレの着ている着物は擦り切れてあちこち汚いボロボロなのだ。生贄として人柱になった時に身に付けていた着物だから当然と言えば当然だけど、年月が経つ内に当初、白かった布は薄汚れ黄ばんでいた。傍から見てもオレは相当ボロっちぃ神様だったと思う。そのままの姿で野山を駆け回っていたのだから尚更だ。だからといって新しい布を買う余裕が極貧神社にある筈も無く、どうせ自分独りきりだからとずっと着古しを着たままだったのだが。
「カカシせんせぇ…、大好きだってばぁ…」
オレのために…。
これってば、オレだけのために用意された贈り物なんだ…。
ぎゅっと真新しい布地に顔を埋める。オレの目の前には優しく微笑むカカシ先生。
オレってば、誰かにこんなによくしてもらったこと、ない。嬉しくて、嬉しくて、涙が出た。カカシ先生はなんて優しい人間なのだろう。そして自分はなんて幸せな神様なのだろう。自分の幸福に酔ってしまいそう。
「ん。喜んでくれて嬉しいよ」
すんすん泣きながらカカシ先生の懐に飛び込んだオレをカカシ先生は優しく抱きとめてくれた。
「オ、オレ。この着物、すげー大事にする。カカシせんせぇ、ありがとう…」
カカシ先生のくれた着物は誂えたようにオレにぴったりだった。着心地が今までの木綿と違って格段に良くって、くるんと一回転すると布地がするするとオレの肌を滑る。これはもしかすると絹とかいうやつかもしれない。きっとオレが今まで見た事も無い極上品なのだろう。
「うん。凄く似合ってるよ。帯は赤にして正解だね」
「え…、あ、うっ?」
「今度は真っ赤な着物なんてのもいいかもね。純白な白もいいけど、ナルトは可愛いからきっとなんでも似合うよ…」
「か、可愛くなんてないってばよ…」
オレが恥入って爪先に視線を落として俯いてると、ちょいちょいとカカシ先生が手招きしている。膝に座れってことらしい。
躊躇いがちにカカシ先生の方へ歩み寄ると、急にカカシ先生に腕を引っ張られて驚いた。
「んふっ。んんん~っ!」
いきなり口を塞がれて苦しいことされる。オレってば、実はちょっとコレが苦手。上手く息が出来ねぇし、カカシ先生と密着出来るのは嬉しいけど、ただ抱っこしてもらったり、頭を撫でてくれるだけでオレは十分なのに…。
そのまま息があがるまで拘束された後、オレってば力尽きちゃってカカシ先生の肩に凭れ掛る。頭を撫でてくれるカカシ先生の手が気持ち良い。
新しい着物を着たオレを見降ろして、カカシ先生が「可愛いね」って沢山言ってくれる。こんな虚脱状態のオレのどこが可愛いのだろう?凄く恥ずかしいけど、カカシ先生に褒められて嬉しい。そのままカカシ先生はオレの着物の裾に手を入れたり、何度もおでことかに唇を寄せる。
やがて、ふんわりとカカシ先生の良い匂いが鼻孔を擽ってオレってば、はふって息を吐いた。
「ナルトはねぇ、千年間も一人で頑張っていたんだから、少ーし我が儘になったほうがいいと思うんだよねぇ」
「我が儘…?」
「そう。たった26年足らずしか生きてない若輩者のオレになんか甘えれないかもしれないけどね。もう少しオレを頼ってね」
「そ、そんなっ!カカシ先生のことオレってばすげー尊敬してるし、それにカカシ先生ってばオレより物知りじゃん。オレってば色んな事が勉強出来て、凄くカカシ先生に感謝してるってばよ」
「うん。おまえの気持ちはちゃーんと伝わってるよ。だけどね、おまえの 神主としてはもう少し、甘えて欲しいの」
「う、うん」
「オレとおまえだけの特別な甘え方、ちゃぁーんと教えてあげたデショ?」
耳元でぼそぼそ呟くカカシ先生の言い含めた言葉に、ぼっと顔が火照ってしまう。何を隠そうオレとカカシ先生はついこの間、〝契りの儀式〟を行ったばかりなんだ。これはオレとカカシ先生の絆がもっと深くなる大事な儀式で、神様と神主の間には必要な事なんだって。オレってば千年も神様をやっていたのに全然知らなったってばよ。
儀式の始めは凄く痛くって。だけどオレから一回白い液体が飛び散ってからは、段々身体の奥がジンジンしてきて。…その後の事はよくわからなくなっちゃった。
カカシ先生が言うにはオレとカカシ先生は凄く〝相性〟が良いから快楽が強いんだって。でもオレってば物知らずだから、一から十までカカシ先生に教えて貰わなくっちゃいけなくって、恥ずかしかった。これからは神様の威厳を保つために、オレも頑張らなくっちゃって決心したんだってば。
「あ、カカシ先生の、おっきいってばよ」
「うん。ナルトが可~愛いからオレの元気になっちゃったねぇ」
大きいの、はち切れそう。これ、カカシ先生がオレのコト欲しいって証なんだって。カカシ先生の着物の前を寛げてあげると、育った先生の欲望。白い液体がぷくんって沢山出てくる。
嬉しい、嬉しい。こんなオレを欲しがってくれるカカシ先生のためならオレってばなんでも出来るってばよ。
カカシ先生の太い幹、根元から上にかけてぺろりと舐める。横から吸いつくと、ちゅ、って変な音がした。オレの口ってばちっちゃいから、カカシ先生のを全部舐めてあげる事が出来ない。その代り、大きな飴を舐めるみたいに横からカカシ先生の長いのを舐めるんだってば。
咥えきれなくて、余った幹の根元は手で握る。カカシ先生のは太いからオレってば両手で輪っかを作らないといけない。じゅっ、じゅっ、と濡れた音が境内に響いてオレのお尻から昨晩カカシ先生が出したセーエキが漏れて尻尾が毛羽だっちゃう。
一生懸命舐めていると、頬にカカシ先生の硬いのがあたった。上に居るカカシ先生を見上げたら、カカシ先生のがぐんって大きくなったってばよ。
嬉しくて自然と尻尾が振れてしまう。〝ナルトは淫乱な神様だね〟ってカカシ先生が褒めてくれた。嬉しくってオレってばもっと頑張ろうと、根元まで目一杯咥える。
「んぅ…」
「は。いいよ、ナルト。上手だね」
四つん這いになったオレのお尻にカカシ先生の指が伸びてきて、あ、カカシ先生の事を〝受け入れる〟ための準備をするのだなってわかった。
香油を塗られるとオレってばもう駄目。変な声がいっぱい出てカカシ先生に縋っちゃうんだ。
「あ、カカシせんせぇ、〝もっと、もっとぉっ!〟」
「ふふ。そう、そう。そう言うんだったねぇ…。ねぇ、ナルト。何が欲しいんだっけ?」
「あっ、あんっ、〝カカシせんせぇのおっきくて硬いのぉ〟」
カカシ先生がオレに教えてくれたこといっぱいある。オレってば世間知らずだから、知らない事だらけだったけど、頑張ってカカシ先生にご奉仕するんだってばよ!だってさ、お仕事を頑張ったらカカシ先生ってばいっぱい〝いいこ、いいこ〟してくれるんだ。オレ、頑張る。これもシュギョーや〝日課〟だと思って、立派なお狐様になってみせるってば。
「ぁ、ぁあっ、あっ」
太い棒に串刺しにされて、股の間は引き攣ったように痛くって、ひくんひくんって痙攣している…まだ初心者のオレは痛くって泣いちゃったけど、オレってば幸せなの。
「ねぇ。ナルト。他に何かオレにお願いしたい事はなぁい?」
「……へ?」
「沢山我が儘言っていいってオレ言ったデショ?」
さっきからカカシ先生はくったりとなったオレの髪の毛を弄っている。厭きないのかなぁ?
「ね…ナルト?」
「本当になんでもいいんだってば…?」
だって、オレってば神様なんだ。人のお願い事を叶える事はあっても、自分の願い事なんて言ってみたこともない。
でも、カカシ先生には言ってもいいかな。千年間ずっとして欲しかった事、お願いしてもいいかな。
オレってばぴょこんと立ち上がって、カカシ先生に貰ったばかりの着物の裾をきゅっと握った。
「た…」
「た?」
突然立ち上がったオレを、カカシ先生が見詰めている…。それだけでオレの胸は切なくなっちゃうってば。三角耳がぱたんと頭の上で寝てしまう。
「たくさん、ぎゅってして?」
「―――…」
オレってば、思わず目を瞑る。言っちゃったってば。でも、いつまで経ってもカカシ先生の反応がなくて、薄らと瞳を開けてみると、カカシ先生がびっくりしたみたいに固まっていた。
「や、やっぱなんでもねぇ。ごめんなさい。カカシせん…!」
オレってばなんて馬鹿な願いをカカシ先生に言ってしまったのだろう。恥ずかしい。オレってばカカシ先生より千年も多く生きているのに、こんなの普通の小さい子供のようだってばよ。だけど…
「ナルト。可愛いね…」
「んぎゃ!?」
突然、カカシ先生に引き寄せられた。見上げれば、今までにないくらい真剣な顔をしたカカシ先生の顔がある。
「おまえ。そんな可愛いこと言って、―――知らないよ?」
「へ?」
「オレは小狡い人間だから、おまえのこと利用してるのに、なんでおまえはこんなに綺麗なんだろうねぇ」
カカシ先生の顔が優しい。どうしてだろう?
「おいで。一番幸せな神様にシテあげる…」
オレ、カカシ先生に抱き締められた。きっとこの人はオレの運命の人。
〝オレの神主様〟なんだってば。こんなに綺麗で優しい人が、オレのために傍に居てくれる…。それだけでオレはなんて幸せな神様なんだろうと思うんだってば。
凄く不幸な子が「自分は凄い幸せ」と思い違いをしている不憫なパターンが好き。